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金持ち父さん貧乏父さん [読書]

最近、と言っても、昨年末だが、税理士を変えたのだ。
特に不満があったということではないけれど、特に満足もなかったのだ。

その方は税理士事務所を立ち上げたばかりの独立ほやほやの方だった。
だから、当時の自分はそこに魅力を感じて、一緒に成長していければいいな、
と漠然と考えていたのだが。。。

新しい税理士は会計士の資格も持っていて、バリバリのキャリアの道を歩いている、という感じの方。
だから選んだわけでなく、税理士を変えたいなと思って、
気になる税理士の方にかたっぱしから電話して、話をして、
魅力を感じた方には直接お会いして話をして、という手続きを踏んで選んだ方です。

理由はひとつ、会った時に説教されたから。

「もっとお金のことを勉強してください!」

だから勉強することにした。

手始めに毎日の帳簿つけは自分ですることにした。

今までは月末に領収書、通帳のコピー、請求書などなどを一つの袋にいれて「はい」と
渡していたのだが、いまは全部自分で帳簿に記帳し、領収書を整理し紙に貼りまとめている。

さらに会計や財務の本を読み始めたのだが、難しくてワカンネ、というか、概念が理解できない。
その時に教えてもらった本がこれ。「金持ち父さん貧乏父さん」という本、
以下の様なことををわかりやすく書いている。

“仕事というのは長期的な問題に対する短期的な解決方法である”

“お金と安全な道ばかりを求めているからチャンスが目に入らない。
だから結局求めているものしか手に入らない”

“自分たちの消費癖が収入を増やす必要性を生み出している”

極めつけは、これ。

“金持ちは資産を買う、貧乏人は負債を買う”

ああ、なるほど、お金に困る原因はこれね!と眼から鱗の一冊でした。

いまから知って間に合うのか、ということも思ったけれど、
少しずつ、心を鬼にして実践あるのみと思ってやっています。


金持ち父さん貧乏父さん

金持ち父さん貧乏父さん

  • 作者: ロバート キヨサキ
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2000/11/09
  • メディア: 单行本-精装










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管理される心―感情が商品になるとき [読書]

自分が社会へ出たのは’80年代。

その頃は未曾有の好景気(ということはその景気が崩れて去ってから知るのだが)で、
映画や小説になっているので今さらいうことはないのだけど、
けれど、映画や小説だから誇張しているんだろうっていう人もいるのだけど、実際はもっとすごかった(ひどかった)。

社会人ぺーぺーの自分でさえその恩恵に授かり、昼飯を食いに京都の川床まで行ったり、
打ち合せだと称してホテルのスイートを借り、ケータリングを頼み、どんちゃん騒ぎをしていたのだから。

タクシー代なんか一万円以下は領収書不要、月末になると営業でもないのに経費(の使い方が)が足りないから、
週明けまでになんでもいいから20万使ってこい、とか言われ。どうしていいかわからず、友だちに声かけまくって、
人数集めて、カニを食いに行ったり、とか。せいぜいそんなことしか思いつかない経験の無さ。

その頃、自分を含めて広告業界でみんながかならず読んでいたのは、
日経新聞、週刊文春、そしてビッグコミック・スピリッツだった。

そのスピリッツに連載されていたのが“気まぐれコンセプト”という4コマ漫画。

過去を振り返るわけじゃないけれど、今の自分に欠けているのはこういうハチャメチャなお気楽さ。

もちろん当時は現実にもっと無茶苦茶をしていたのだけど、いつの間にか、
コンプライアンスだとかガバナンスとかいう言葉に縛られ、
自分で自分に検閲をするように雁字搦めにしてしまっていたのではないかと思ったのだ。

感情労働という言葉があるらしい。
頭脳労働、肉体労働に加えて、新しい労働のカタチらしいのだけど。

A.R. ホックシールドという人が著した「管理される心―感情が商品になるとき」という本に依ると、
今の労働は以前に比べると肉体よりも心を酷使されている、という。

小売業やサービス業にかぎらず、ヒトとの関係によって成り立っている職業は
(ということはほとんどすべてだろう)“ココロ”を売らねば労務の提供にならないのだ。

別にお客様だけではない、そりの合わない上司や部下、同僚とのやりとりも、
その組織に属して糊口の資を得るのであれば、なめらかな人間関係が成立できたほうが働きやすいだろう。

その滑らかを得るために(本当は全然ココロは滑らかにはならないのだけど)、
理不尽なコトをぐっと飲み込むこともあるだろう。

その刹那、汚れたとか折れたと感じることもあるかも知れない。
そして我慢が重なり、溜まると、ある日ポキっと行くかもしれない。

そのための身の処し方、処世術的なことは色んな本があるけど、
気まぐれコンセプトのヒライのような在り方も、
これからの時代にはより必要なんじゃないかと思ったのでした。


管理される心―感情が商品になるとき

管理される心―感情が商品になるとき

  • 作者: A.R. ホックシールド
  • 出版社/メーカー: 世界思想社
  • 発売日: 2000/04
  • メディア: 単行本





気まぐれコンセプト クロニクル

気まぐれコンセプト クロニクル

  • 作者: ホイチョイ・プロダクションズ
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2007/01/20
  • メディア: コミック










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HARD THINGS(ハードシングス) [読書]

いわゆるビジネス書というカテゴリーの中でベストセラーになっている本です。
ビジネス書なんて大抵読まないんですよ、なぜなら、成功体験しか描いてないから。

薄識としては失敗から学びたいのだと、ずっと思っていた。

たとえば「東大生のノートのとり方云々」みたいな本があると、
そのノートのとり方の本質へ目を向けずに、彼らが使っているノートブック
(コクヨのキャンパスノートとかね)が売れたりしちゃう、
ことには、ずっと違和感を感じていました。

でも、この連休、本を読んで過ごそう、と、思ったので、丸善に一日こもって本を眺めていました。
そこでこの本と知り合ったということです。

買おう、と、思ったのは序文のここに共感したから。
(それに、もう本はこれ以上増やさないぞ、と、誓っていたにも関わらず)

「マネジメントについての自己啓発書を読むたびに、
私は『なるほど。しかし、本当に難しいのはそこじゃないんだ』と感じ続けてきた。
本当に難しいのは、大きく夢見ることではない。その夢が悪夢に変わり、
冷や汗を流しながら深夜に目覚めるときだ」

内容はタイトル通りHARD THINGSです。


この本を読んで、その昔読んだとある本を思い出した。

エキスパートCプログラミング −知られざるCの深層という本で、
人工言語Cのプログラミングについて書いている本です。

まだ、学生の頃、計算機は学校が貸してくれたけれど、
そこで動かすソフトウエアは自前で作るのが当たり前でした。

そして言語はC、だから勉強云々の前にプログラミングができないと勉強すらできないのだ。

当時の計算機はサン・マイクロシステムズというところのSPARCというCPUが積まれたマシン。
いまから比べるととんでもなく遅いが、当時としては中の上くらいの性能を持っていました。

話が逸れそうなので元に戻ると、この本、Cのことについて書いているのだけど、
C以外のことも書いていて、それがすごく面白い。

書いている人はたぶん当時のサン・マイクロシステムズの人だと思うのだけど、
本を読んでいて感じるのは、この人はそれなりにハードな仕事をしていて、
そしてそれに見合う十分な対価を得ていて、職場のコミュニケーションがいい、ということ。


ハードシングスの著者は最初にこう書いています。

「本当に難しいのは、大きく大胆な目標を設定することではない。本当に難しいのは、
大きな目標を達成しそこなったときに社員をレイオフ(解雇)することだ。本当に難しいのは、
優秀な人々を採用することではない。本当に難しいのは、その優秀な人々が既得権にあぐらをかいて、
不当な要求をし始めたときに対処することだ。本当に難しいのは、会社の組織をデザインすることではない。
本当に難しいのは、そうして組織をデザインした会社で人々を意思疎通させることだ。本当に難しいのは、
大きく夢見ることではない。その夢が悪夢に変わり、冷や汗を流しながら深夜に目覚めることが本当につらいのだ。」

事実は小説よりも奇なり、というけれど、読んでいるとかなりドキドキします。




HARD THINGS

HARD THINGS

  • 作者: ベン・ホロウィッツ
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2015/04/17
  • メディア: 単行本



エキスパートCプログラミング―知られざるCの深層 (Ascii books)

エキスパートCプログラミング―知られざるCの深層 (Ascii books)

  • 作者: ピーター ヴァン・デ・リンデン
  • 出版社/メーカー: アスキー
  • 発売日: 1996/03
  • メディア: 単行本











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ライト、ついてますか―問題発見の人間学 [読書]

とあるメーカーのキャンペーンのブレゼンに必要なので、その商品の販売されている現場を見に行った。

もちろんこっそりと。

何軒か量販店の店頭を廻り、とある店舗で面白い話が聞こえてきた。
話をしているのは二人のパートのおばさん、片方が40代真ん中くらいでもう一方が30代後半の模様。

主にしゃべっているのは30代後半の方で、
なんでも子供が中学に上がり学校行事でいろいろと大変なんだと、
で、そんな話を面白おかしくしていて40代真ん中の方を笑わせている。

しばらく話を聞いていて要約すると、こういうことらしい。

いろいろと行事が重なり日程の調整が難しいので、
シフトの入っている日を一日お休みさせて欲しいと、
そういう趣旨の話なんだと30分ほど立ち聞きをしていてやっとわかった。

女の人はこうやってコミュニケーションをとるのか、と、
感慨深く思うところもあったけれど、
どっちかというとメンドクセー職場だなと思った。

二人の関係はというと、40代真ん中のおばちゃんが30代後半のおばちゃんの
人事権があるわけでもなく、上司でもないようだし、こういう気の使い方を
日々求められる職場はやだなと感じた。

逆の見方をすると、この職場環境に適応する身の処し方、処世術といえるのかもしれないが、
この二人が話している間は接客ほったらかし、挙句の果てにカウンターの裏にしゃがみこんで話をしていた。


さておき。

とある問題があるとする。

その時におかしな上下関係があるとその問題の最適な解決策が、
そのおかしな人間関係のせいで見つけられない、という事が起こる。

たとえばAさんとBさんがいて、Aさんからの頼みをBさんは嫌と言えないとしよう。
そしてAさんの直接の要望がAさんの問題解決にとって適切な解ではなかったとする。
そしてAさん自身はそのことを理解していないとする。
もちろんBさんは起こっている問題のエキスパートで、Aさんの要望が問題を解決しないことを知っている。

AさんとBさんが対等であれば、BさんはAさんの要望ではなく『問題を』解析して、
正しい解決策を導くことができる。ところがBさんがAさんに『NO』と言えない場合、
Bさんは『Aさんの要望』に応える事になる。

殺那的にはAさんの要望は満たされるが、
それはそもそも問題を解決しないからAさんの問題は緊急度を増し、
ふたたびAさんに降り掛かってくる。するとAさんはとりあえずの要望をBさんに出し、
Bさんはその『要望』に応え、そしてみごとに悪魔のスパイラルが完成する。

管理者の仕事の一つがこの『行動の管理』である。
 
集団の中にこのような不適切な状態が存在すれば、当然集団全体としてのパフォーマンスが落ち、
「スケジュールに間に合わない」「問題が解決しない」などの大きな状態が発生する。

この場合の真の問題の解決は往々にして「Aさん」に負荷を強いるが、
それでも悪循環を起こすよりはましである、ということをまずは自覚し、
自覚させなくてはいけない。
 
 
「工学」というのはそもそもが問題を見つけ出し、他人のためにそれを解くという事を目的としている。
従って、皆、問題を見つけるのは得意だと思っているし、そんなものはゴロゴロしている、と思っている。

難しいのは問題を解くことの方だと。

しかし、現実にはそうではなく、問題が難しいのは問題が難しいからではなく、本当は正しく定義されていないからだ。

ある事象があって、それによって困っている人がいるとして、それを誰の立場に立って定義するのか、
によって問題は変わり、それによって問題の解決方法は変わる、ということをこの本は教えてくれます。


ライト、ついてますか―問題発見の人間学

ライト、ついてますか―問題発見の人間学

  • 作者: ドナルド・C・ゴース
  • 出版社/メーカー: 共立出版
  • 発売日: 1987/10/25
  • メディア: 単行本









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継続は力になるが、たのしくなければ続けられない。 [読書]

割れた陶器


ずいぶんと以前のことになるけれど、プロのひもという人から話を訊いたことがある。

酒を飲みながらたまたま隣の席についたその人の話を訊いていて、一番盛り上がったところが、
いったいどうやって目をつけた女の人のひもになるのか? というところだった。

彼は事も無げに言った。

最初は小銭を借りる、そしてだんだんとその金額を大きくしていく、
そして彼女は離れられなくなり、やがて彼を養うようになる。

もちろん、われわれとしては異論反論を言った、思いつく限りに。

ところがこれまた簡単に論破された。

女に尽くしてもダメなんだ、女に尽くさせるのさ、
その尽くした大きさだけ女は自分に執着するようになる。

自分が男にしてあげたこと、そのことの量が自分から離れられなくするコツさ。

あとは坂を転がる。

才能がないとできないことというのがある、その一つがひもなんじゃないかと思った。

才能というのは、普通に考えたら、大変だけど、それを苦もなくできる能力だと自分は思う。

頑張らなきゃ、努力しなきゃ、一生懸命やらなきゃ。
そうやって自己啓発? みたいなことをしていやいややってる仕事なんて上手くいくはずがない。
なぜなら、やってる本人が上手くいくと思ってやっていないからだ。

大変だと思ったら続けることがとても難しい。

それをやることが楽しくて愉しくてたのしくて仕方がないから、大変だけど続けられるのだ。

この人たちもきっとそういう人だったのだと思う。


広告に恋した男

広告に恋した男

  • 作者: ジャック・セゲラ
  • 出版社/メーカー: 晶文社
  • 発売日: 1984/11
  • メディア: 単行本



「売る」広告[新訳]

「売る」広告[新訳]

  • 作者: デイヴィッド・オグルヴィ
  • 出版社/メーカー: 海と月社
  • 発売日: 2010/09/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



スティーブ・ジョブズ I

スティーブ・ジョブズ I

  • 作者: ウォルター・アイザックソン
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/10/25
  • メディア: ハードカバー



スティーブ・ジョブズ II

スティーブ・ジョブズ II

  • 作者: ウォルター・アイザックソン
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/11/02
  • メディア: ハードカバー







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酒と煙草と女と魚。壽屋コピーライター 開高健 [読書]

壽屋コピーライター 開高健


関西から出てくる広告って面白い。
ちょっと人を喰ったような、それでいて憎めない、そして面白い、そういう広告が多いように感じる。

それが受け入れられる懐の深いカルチャーがあるからだと思うんだけど、
それらのクリエイティブを創りだしていけるマインドってアマチュアリズムなんじゃないかと思う。

そういう優れて人々の心に突き刺さり、共感を誘う流れをつくり、無意識の水脈の率直な追求が、
時々辟易してしまうところがあるにせよ、時のサントリー宣伝部の人たち、
特に開高健だったように思う。

この本はコピーライターになるまで、そしてコピーライターになり、
芥川賞作家となった開高健の生きる足跡を綴った本である。

酒造メーカーに勤務しながら、毎日の仕事の終わりにはガード下の立ち飲みでハイボールを
何杯も飲んて家路につく、その同時代性が同じように会社員として働く人たちの共感を生んだ。

時とともにハイボールがワインになり、珠玉の名作“ロマネ・コンティ・一九三五年”を書かせた。

この本によると開高健はとても書くのが遅かったらしい。
テーマとなるモチーフを見つけ、カタチにするのに長い時間が必要な種類の作家であったと記してある。

自分の机の上を原稿用紙で綺麗に拭いてから執筆にとりかかるそうだ。

作家の生き様とその作品の芸術性は無関係だが、自分のような景色がよく見えないものには、
その生き様を持って作品の理解の手がかりとなる。

ラテン語のことわざに"Verba volant, scripta manent."というのがあり、
言葉は飛んでしまうが書いたものは残る、という言い回しがある。

至極当然だと思う。

開高健記念館


ここは茅ヶ崎にある開高健記念館の書斎。
右側に置かれた灰皿とグラスがとても印象的だった。



壽屋コピーライター 開高 健

壽屋コピーライター 開高 健

  • 作者: 坪松博之
  • 出版社/メーカー: たる出版
  • 発売日: 2014/04/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




ロマネ・コンティ・一九三五年―六つの短篇小説 (文春文庫)

ロマネ・コンティ・一九三五年―六つの短篇小説 (文春文庫)

  • 作者: 開高 健
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/12/04
  • メディア: 文庫








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深夜プラス1 ギャビン・ライアル [読書]

シトロエンDS


二十代の最初の頃はとてもとても本に飢えていて、
手当たり次第、手に触れる、目に入る本を片っ端から読んでいました。

学生の頃は図書館へ行き、この棚の端から端まで全部借りる、と言うと、一人20冊までです、と注意され、
社会へ出ると会社の帰りに本屋へ寄り、でっかい紙袋いっぱいに本を買い、
枕元で読むやつ、風呂で読む本、電車で読む分とだいたい平行して三冊をいつも読んでいました。

#当時はアマゾンとか無かったから良かったです。
#この時、アマゾンがあったら、間違いなく本で破産してたでしょう。

それにしても、なんで、こんなに字に飢えるのだろう、
いつから本ばかり読むようになったのだろうと記憶をたどると、
中学生の頃、一時期外に一切出なくなり、いまでいう引きこもりみたいな感じになって、
その時に本から得られる気持ちよさに目覚めたんだと思います。

当時は一日に三冊から四冊ほどを読み
(中学生の頃だから体力あるね、いまはとても無理、本を読むのって体力いるから)、
部屋の中が本だらけ、まさに乱れ打ち涜書三昧って感じでした。

その引きこもりもバイクの免許を取ると無くなり、
今度は外に出っぱなしで、家に帰るのは腹が減った時だけ、
そして一切本を読まなくなり、バイクを弄るだけでは物足りず、
弄ったバイクで女の子の尻ばかりを追いかけていた16歳の夏でした。

ちょっと枕が長くなりましたが、この本、深夜プラス1ですが、
これはその本漁りをしていた時に見つけた、のではなく、
ロバート・B・パーカー、ダシール・ハメット、レイモンド・チャンドラーと
珠玉のハードボイルドを読んでいて、その流れで発見した本です。

この頃はその流れの源泉にいるアーネスト・ヘミングウェイにはまだ手付かずでしたが。

主人公のルイス・ケインがパリのカフェ、ドゥ・マゴで雨をしのいでいる時、
戦時中のコードネームで彼宛に電話が入ります。

依頼をしてきたのは彼の戦時中の仲間、アンリ、という、今ではパリで屈指の弁護士と言われている男。
仕事の内容はある男をクルマでフランスのカンペールからリヒテンシュタインという国まで
無事に送り届けて欲しいというものでした。

戦時中、フランスのために戦ったレジスタンスを、仲間に持つ元スパイの感傷的なイギリス人、ルイス。

世界的な企業を経営、節税のためにリヒテンシュタインに会社を登記、
婦女暴行の嫌疑をかけられている実業家、マガンハルト。

イギリスの上流階級の婦女子を読み育成する学校を卒業し、
今ではマガンハルトの秘書を務め、ガンマンに恋をしてしまうイギリス人女性、ヘレン。

シークレットサービスでアメリカ合衆国大統領のボディーガードをしていたアル中でプロのガンマン、ハーヴェイ。

この四人の行動と言葉を手がかりに読み手はどんどんストーリーにのめりこんでいきます。

翻訳は菊池光氏。ロバート・B・パーカー、ディック・フランシスの翻訳で名を馳せた方。
この人の翻訳好きです、乾いていて、暖かく、冷たくなくて、優しい文章を書かれます。

イタリアには“Traduttore, traditore.”、翻訳者は裏切り者だ、ということわざがありますが、
菊池光氏の翻訳は見事に裏切られる素晴らしい日本語になっています。

ストーリーにはふたつのクルマが出てきます。
ひとつはシトロエン、それもDS、もうひとつはロールズ・ロイス(ロールスではなく濁ります)のファントムII。

ロールズの方には乗ったことがないけれどDSには乗ったことがあります。
どういうクルマかというと、今だったらとてもとても厄介なクルマです。

当時のフランスではサルーンの位置づけで、時の大統領シャルル・ド・ゴールの専用車でもありましたが、
目的地まで時間通りに着くという局面では絶対にセレクトしたくないクルマです。

何故かというとこのクルマには「ハイドロ・ニューマチック」というメカニズムが使われており、
ブレーキ、サスペンション、ステアリングのパワーアシストのために、ボディー全体に
まるで血管のようにシステムの動力を伝達する配管がなされていて、それがまた脆い。

ハイドロ・ニューマチックは先進的な油圧制御なのですが、
設計思想は進んでいても、部品の工作精度や組み立ての精度が今ひとつなんです。
そして油圧を生み出す油に酸化しやすい植物油を使っているのも曲者。

クルマとしてのDSの佇まいは、それこそフランス文学的抽象でなんともデカダンなんですけど。

ストーリーの中でクルマは事故に遇い、
それが原因でDSのというかハイドロが壊れ行く様を作者はリアルに描写しています。

この人はきっとDSに乗ったことがあるんだ、そしてハイドロが壊れちゃったことがあるんだ。

だんだんとサスペンションが効かなくなり、ブレーキもままならず、ステアリングも重くなってくる、
でも、たとえそうなっても最後までクルマを御していくドライバーのケインに共感を覚えました。


タイトルの深夜プラス1、ちょっと不思議なタイトルですが、
原題である“Midnight Plus One”と書くとわかりやすいと思います。

深夜12時1分過ぎがルイスの請け負った仕事のタイムリミットなんです。


深夜プラス1 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 18‐1))

深夜プラス1 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 18‐1))

  • 作者: ギャビン・ライアル
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1976/04
  • メディア: 文庫











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長いお別れ レイモンド・チャンドラー [読書]

レイモンド・チャンドラーの著した長編小説で清水俊二氏が日本語にしたものを読みました。
チャンドラーの作品の中では長編にあたります。

主人公のフィリップ・マーロウってどんな感じの人なんだろう? と、
読みながら考えていたらこういう描写がありました。

「.....髪は濃い鳶色。グレイが少々混じっている。眼も鳶色。身長六フィート一インチ半。体重はおよそ百九十ポンド。姓名はフィリップ・マーロウ。職業は私立探偵。」

シンプルで明快です。

そしてマーロウの視線で綴られていく話を読めば、自然、「この人」がどんな人なのかよくわかります。

終始、マーロウとレノックスの交わす言葉は少ないけれど、お互いに忌憚のない暖かいやりとりに、
こんな友達いたらいいなと感じる瞬間もあります。

「ぼくは店を開けたばかりのバーが好きなんだ。店の中の空気がまだきれいで、冷たくて、何もかもぴかぴかに光っていて、バーテンが鏡に向かって、ネクタイがまがっていないか、髪が乱れていないかを確かめている。酒のびんがきれいにならび、グラスが美しく光って、客を待っているバーテンがその晩の最初の一杯振って、きれいなマットの上におき、折りたたんだ小さなナプキンをそえる。それをゆっくり味わう。静かなバーでの最初の静かな一杯——こんなすばらしいものはないぜ。」

「アルコールは恋愛のようなもんだね」と彼は言った。「最初のキスには魔力がある。二度目はずっとしたくなる。三度目はもう感激がない。それからは女の服を脱がせるだけだ。」

「結婚したときは37でした。女については大ていのことは知ってる年齢です。大ていのことと言ったのは、女について何もかも知りつくしている人間はいないからです。」

文庫で読んでいるのですが、既に五冊目。

手元にいつもおいてあり、時々ふらっと、ページを手繰りたくなり、ぼろぼろになってしまい、
ページがほつれ、どうにもこうにも読みづらくなると新たに買います。

初めて読んだのは二十歳の頃で、ずいぶんと啓蒙されてしまった部分もありましたが、
しょせんけつの青いガキがまねしても格好がつかないという事も今になってよくわかりました。

ストーリーの最後で「ギムレットにはまだ早すぎるね。」という台詞が
素晴らしいと巷では評判のようでしたが、それがなぜなのか自分にはわかりませんでした。

しかし「ギムレットの似合う大人」になりたいものだとは思います。

でも、たとえバーに入っても、(その背景を知っているだけに)なかなか頼みづらいカクテルです。

最近はヴェスパーを頼むこともあるのですが、キナ・リレ というワインの一種が置いてある店が
殆ど無くて、結局、バーボンの原酒とかをストレートで頼み、チェイサーに氷を入れない水をお願いします。

ちなみに「タフでなければ生きていけない、やさしくできなければ生きていく資格がない」
 "If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive."
という台詞は「プレイバック」というチャンドラーの小説に出てきます。

「あなたのようにしっかりした男がどうしてそんなにやさしくなれるの?」と訊かれた時、
マーロウがその女性に答えたの時の言葉です。

ときどき、「やさしくなければ」と訳されていることもありますが、
“If I couldn't ever be gentle”とチャンドラーは書いているので
「やさしくできなければ」のほうが、チャンドラーの意図に近いと思います。








清水俊二氏の翻訳に加えて、村上春樹の翻訳もあります。
読み比べるとマーロウのキャラがちょっと違うので面白いです。

あと、清水俊二氏の方は初出が早いこともあり、
今の言葉と少し距離があると感じることもありますけど、
自分は清水俊二氏のマーロウのほうが好きです。



長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1))

長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1))

  • 作者: レイモンド・チャンドラー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1976/04
  • メディア: 文庫



ロング・グッドバイ (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-11)

ロング・グッドバイ (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-11)

  • 作者: レイモンド・チャンドラー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/09/09
  • メディア: 文庫


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